適用年と概算の範囲
本シミュレーターは,2026年分(令和8年分)の所得税および2027年度(令和9年度)の個人住民税を対象とした年額概算モデルを提供します.給与天引き等による毎月の源泉徴収額や賞与ごとの控除額を精緻に算出するものではなく,年間の総収入と設定された控除条件から導かれる税負担と参考手取り収支の目安を提示する仕様です.
入力可能な金額は0円から1億円までの整数値(円単位)に制限されています.収入区分としては,会社員やパートなどの「給与所得」またはフリーランス等の「事業所得」のいずれか単一の区分を選択します.給与と事業を合算する総合課税のシミュレーションや,不動産所得・譲渡所得・退職所得など他の所得区分を交えた計算には対応していません.
本ツールの数値計算は利用者のブラウザ上でJavaScriptを用いてリアルタイムに実行され,専用の実行ボタンを押すことなく入力変更が即座に反映されます.入力データが本ツールの機能により外部サーバーへ送信されることはありません.
本モデルは,2026年12月1日施行の所得税法改正(基礎控除の改定等)を年額計算に適用した設計です.そのため,2026年11月以前の月次源泉徴収ルールとは計算根拠が異なり,年の途中の死亡・出国に伴う準確定申告や非居住者の源泉分離課税にも対応していません.利用者はこれらの限定的な前提を理解した上で,試算を開始してください.
給与収入から所得へ
収入区分として「給与所得」を選択した場合,入力された額面年収(年間総支給額)を基に2026年分の給与所得控除額を算出し,給与所得を求めます.
国税庁の規定(タックスアンサーNo.1410)に準拠した計算ロジックを実装しており,額面年収が74万1000円未満の場合は給与所得を0円として扱います.それ以上の金額帯については,年収に応じて定められた計算式が適用されます.年収が219万1000円未満であれば「年収-74万円」,その後360万円未満および660万円未満までは,4000円単位で区切られた金額に所定の率と控除額を適用する端数表計算を再現しています.
さらに年収660万円以上850万円未満では「年収×90%-110万円」を適用し,年収850万円以上では一律「年収-195万円」として給与所得控除額が上限(195万円)に達します.
算出された給与所得が,後続の所得控除や税額計算の基礎となります.本ツールではこの計算をリアルタイムで実行し,課税対象額のベースを生成します.なお,所得金額調整控除などの特例措置には対応していないため,特定の要件を満たす場合であっても基本の給与所得控除のみを適用した結果が示されます.
操作画面では,まず年収数値を入力して給与所得がどのように圧縮されるかという内訳を確認する手順から始まります.
事業と経費・青色
収入区分として「事業所得」を選択した場合,年間総売上から必要経費および青色申告特別控除額を差し引いて事業所得を計算します.
本ツールでは,売上額に対する経費を自由に設定可能であり,入力された経費額はそのまま売上から減算されます.申告形態として「65万円控除(e-Tax等)」「55万円控除」「10万円控除(青色)」「控除なし(白色等)」の4種類の選択肢を用意しています.内部の計算処理においては,売上から経費を差し引いた残額(事業利益)を上限として青色申告特別控除額を差し引きます.
経費と控除額の合計が売上を上回る場合でも,税額計算上の事業所得の下限は0円として扱われ,マイナスの所得が作られることはありません.
ただし,本シミュレーターは入力された数値を計算するのみであり,青色申告承認の妥当性や経費の適法性を判定するものではありません.また,青色申告特別控除は税務上の控除であり現金の支出を伴わないため,手元現金の試算(参考収支)においては差し引かれません.事業収支の現金ベースは「売上-経費」として評価され,仮に経費が売上を上回って赤字となった場合でも,手取り収支欄では数値を0円に切り上げることなく,マイナスの赤字残額としてそのまま明示されます.
控除と社会保険の選択
本シミュレーターの基礎控除は,2026年分の税制改正(国税庁タックスアンサーNo.1199確認済み)に対応し,合計所得金額に応じた逓減方式を採用しています.合計所得金額が489万円以下の場合は最大の104万円が控除されます(No.1199の表において所得489万円以下の全区分を包括する設計です).
その後,655万円以下で67万円,2350万円以下で62万円,2400万円以下で48万円,2450万円以下で32万円,2500万円以下で16万円と段階的に減少し,2500万円を超えると0円となります.
扶養控除は「一般の控除対象扶養親族」の人数(0人〜20人)のみを指定可能です.入力人数に対し所得税では1人あたり38万円,住民税では1人あたり33万円が控除されます.配偶者控除・配偶者特別控除,16歳未満の年少扶養,特定扶養,老人扶養など他の人的控除は一切含みません.
社会保険料の取り扱いは本改修における重要項目です.初期状態では「実額入力」が選択され,入力欄は空欄から開始します.社会保険料控除は本年中に本人の収入から直接支払った実額(控除額=支出額)を対象とし,空欄または不正値の場合は税額や合計手取り額の計算が行われず保留(未計算)となります.
自己負担がない場合の「0円」は有効値として受け付け,空欄と明確に区別されます.実額の上限はツールの一般上限である1億円まで入力可能です(家族分立替や別所得由来で控除額と支出額が乖離するケースは対象外).
任意選択として用意されている「独自仮定」では,給与所得者は額面年収の15%(上限180万円),個人事業主は事業所得の10%+19万8000円(上限120万円)を社会保険料とみなします.この仮定値は法定料率や将来の年金受給額を表すものではなく,手元に保険料データがない場合の比較用モデル値です.
所得税計算と住民税の仮定比較
算出した課税対象額に対し,所得税と住民税の計算プロセスを展開します.
所得税の計算では,所得から基礎控除,扶養控除,確定した社会保険料を差し引いた課税所得(1000円未満切り捨て)に対し,5%から45%までの7段階の超過累進税率を適用します.算出された基準税額に2.1%の復興特別所得税を加算し,100円未満を切り捨てて所得税参考額を求めます.社会保険料の条件が確定していれば,住民税が未確定であっても所得税参考額と所得税課税所得は画面上に表示されます.
一方,住民税については初期状態で「未確認」として扱われます.住民税には自治体ごとの均等割額の差異,所得税との人的控除差を是正する調整控除,および自治体基準に基づく非課税限度額判定(非課税基準)が存在します.本ツールはこれらを自動判定しないため,誤った税額表示を防止する目的で,初期状態では住民税額および合計手取り額を非表示とします.
年収0円であっても機械的に一律5000円を課すような表示は行いません.
利用者が明示的に「課税を仮定した比較」を選択した場合に限り,住民税用の基礎控除テーブル(合計所得2400万円以下で43万円,2450万円以下で29万円,2500万円以下で15万円,超0円)および扶養控除(33万円×人数)を差し引いた住民税課税所得(1000円未満切り捨て)を算出します.
この課税所得に標準税率10%を乗じ,均等割等を便宜的に模した固定の5000円を加算して住民税の試算額を導出します.この際,項目ラベルには「課税仮定」「参考収支」と明記され,確定した課税ではないことが示されます.
参考収支の把握と明細照合の手順
利用者が自身の状況を検証するための標準的な手順は以下の4段階です.
試す:年収や売上を入力するか,画面上の「500万円比較例」ボタンを押して基本条件を読み込みます.この比較例ボタンは,給与500万円,扶養0人,社会保険料実額750,000円,住民税「課税仮定」を一括設定し,給与所得3,560,000円,所得税課税所得1,770,000円,所得税90,300円,住民税仮定243,000円,参考収支3,916,700円という数学的基準値を提示します(実際の個人の保険料額を主張するものではありません).
内訳確認:表示された給与所得や各種控除額を確認し,年収から所得への圧縮が適正に行われているかを点検します.
条件比較:社会保険料の実額入力と独自仮定(年収300万円で45万円・所得税2.7万円・住民税仮定11.9万円・参考収支240.4万円,年収700万円で105万円・所得税27.41万円・住民税仮定37.7万円・参考収支529.89万円)を切り替えたり,住民税の「未確認」と「課税仮定」を比較して,前提条件の違いが手元収支に与える影響を把握します.
明細照合:手元の給与明細書の社会保険料支払額や源泉徴収票,住民税決定通知書の記載額と各項目を照合し,ツールの仮定値との差異要因(調整控除,地域差,家族条件等)を検証します.
本ツールのシミュレーション結果は限定モデルに基づく参考値であり,正確な税額の確定や個別の税務判断については,国税庁等の公式一次資料を参照し,所轄税務署や税理士等の専門家へご相談ください.